一昔前まで、日本では「バル(スペインのバー・カフェ)」にあまり馴染みがありませんでしたが、最近では非常によく聞く言葉になりましたよね。
感度の高いあなたなら、既に何回か店に足を運んだことがあるかもしれません。
そんなバルで提供される主な料理が、「タパス」や「ピンチョス」といったものです。
なんとなく”お酒と一緒につまむもの”というイメージを持っている方は多いと思いますが、その正確な違いをご存知でしょうか?
今回は、よく間違われやすい「タパス」と「ピンチョス」の違いについて、分かりやすくまとめました。
恥ずかしい思いをする前に、こっそり知識を身につけちゃいましょう!
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一目で分かるタパスとピンチョスの違い
よく同義で用いられることも多い「タパス」と「ピンチョス」ですが、実は大きな違いがあります。
一目で分かるよう表にまとめましたので、まずは下表をご覧ください。
タパス | ピンチョス | |
---|---|---|
主な違い | ワインと嗜む 少量の小皿料理 | パンに具材が 乗せられた軽食 |
用いられる 食材 | オリーブ、チーズ、 ハムなど | 鱈、アンチョビ、 コロッケなど |
色合い | 普通 | 鮮やか |
こうしてみると、その違いは歴然ですね。
ではそれぞれの特徴を、もう少し詳しく見ていきましょう。
タパスは生粋のワインのお供
タパスとは、スペイン語で「蓋」を意味する「タパ」が複数形になったものです。
かつて居酒屋で甘いシェリー(ワイン)を飲んでいた客が、ワインにショウジョウバエや埃が入るのを防ぐ為に、パンや肉の切れ端などの軽食を蓋にしたことが、名前の由来だと言われています。
昔中世ヨーロッパに存在したカスティーリャ王国のアルフォンソ10世は、ワインと少量の料理を食間に摂ることで自身の病気が回復した為、居酒屋でワインを扱う際は、必ずタパス(軽食)も一緒に提供することを命じたそうです。
そうしてワインと一緒に食べられるようになったタパスは、今ではスペインバルの定番となり、子供から大人まで幅広く親しまれているのです。
タパスのポイントは塩辛いこと
スペインで公式にワインのお供となったタパスは、バーテンダーやレストランの支配人により、様々なものが作られるようになりました。
オリーブやチーズ、ハムまたはチョリソなどが一般的ですが、その種類は非常に豊富です。
ただ多くに共通している特徴が、塩辛く喉が乾くということです。
ワインの売り上げを良くする為、タパスは味付けの濃いものへと変貌していったのです。
現代日本の居酒屋料理(唐揚げや焼き鳥など)でも、とても味付けが濃いものに出会うことがありますが、もしかしたら気づかぬうちに居酒屋の思惑にハマっているかもしれませんね^ ^;
スペイン人は大食い?
スペインにおけるタパスは、実は食事ではありません。
食事と食事の間に摂る、いわばおやつのような存在だと言うのが正しいでしょう。
しかし、タパスはワインと共に数件ハシゴするのが本場流です。
ではスペインの人々は、そんなに大食漢なのでしょうか?
実はこれには、スペイン特有のカラクリがあるのです。
日本では、夕食と言えば18時頃から20時頃を目安に摂るのが一般的ですよね。
ところが、スペインでの夕食は21時から23時が一般的であり、遅い時には0時を過ぎることもあるそうです。
昼食も13時半から16時頃と遅めではありますが、仕事が終わってから夕食までの時間が異様に長い為、タパスはつなぎとして欠かせない存在となっているのです。
ピンチョスは立食の定番軽食
ピンチョスは、スペイン語で「串」を意味する「ピンチョ」が複数形になったものです。
その名の通り、かつては小さく切ったパンに乗せられたアンチョビなどの具材が串で留めてあったことから、この名で呼ばれるようになりました。
串で一口サイズにまとまっていて食べやすい為、スペインでは立食での交流の場で用いられるのが一般的だそうです。
ピンチョスはタパスの派生料理
ここまでタパスとピンチョスの違いを見てきましたが、実はピンチョスはタパスから派生したものだと言われています。
ピンチョスの発祥はスペインの都市「サン・セバスティアン」であり、タパスを提供しているバルがカナッペ(薄く切ったパンに肉や魚を乗せたもの)のようなものをカウンターに起き始めたのが起源だそうです。
タパスよりももっと気軽に食べられるおつまみとして人気となったピンチョスは、今ではタパスと並ぶほどのバル定番料理となったのです。
色鮮やかで見た目も美しいピンチョス
ピンチョスはタパスから派生した為、お酒に合うのはもちろんのこと、色鮮やかという特徴もあります。
生ハムやオリーブ、トマト、きゅうりなど様々な具材を串でまとめるので、とてもカラフルで可愛らしい見た目のものが多いです。
また、単に具材を串で刺すだけでなく、魚でオリーブを包み込むなど形も様々なので、見た目も楽しめるのがピンチョスの特徴の一つだと言えるでしょう。
国による違いにもご注意を!
今回は、最もポピュラーなスペインにおけるタパスとピンチョスの違いを解説してきましたが、どちらもスペインだけの食文化ではありません。
例えば、フィリピンでのタパスは、アメリカのビーフジャーキーに似た牛肉の塩漬けとなります。
フィリピンでは甘めの味付けが好まれる為、牛肉を甘めのタレに漬け込んで揚げたり焼いたりしたものを主菜とし、ご飯や目玉焼きと共に食べられるようです。
また、プエルトリコやエクアドルでのピンチョスは、日本でいう焼き鳥のようなものとなります。
バーベキューで使われる長い串に肉や野菜が刺され、焼いたものが串のまま提供されるようです。
このように、タパスもピンチョスも国によっても大きな違いがあるので、頭の隅に置いておくと良いでしょう。
タパスやピンチョスへの知識を深めて食を楽しもう
昨今では耳にすることも多いタパスやピンチョスですが、普段何気なく使っていても、正確な違いや歴史まではなかなか知る機会がありませんよね。
でもいざ知ると様々な食文化に触れることができ、より食事が楽しくなるはずです。
タパスやピンチョスへの知識をもっと深め、ホームパーティーの小ネタとして話題にするなんていうのも面白いかもしれませんね。